超音波検査をiPhoneで!?[動画あり]

引用元:<https://wired.jp/2018/01/31/ultrasound-on-your-phone/

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手のひらに、もっと簡単に超音波検査を──iPhoneで「命を救う」革新的デヴァイスは、いかに生まれたか

 

もしジョナサン・ロスバーグが超能力をもっているとすれば、それは数百万ドルするメインフレームサイズのコンピューター数台を1つの半導体に詰め込む能力だ。エンジニアであり起業家でもあるロスバーグは、1個の半導体チップ上でDNAシークエンシングを行う世界初のDNAシーケンサーを発明したことで有名(かつリッチ)になった人物である。

 

ロスバーグはこの8年間にわたり、その技術に関する知識(および相当な資金)を新たなヴェンチャーに注ぎ込んできた。それはスマートフォンの画面を、人体の内部を見る「窓」にするというものだ。

 

ロスバーグが起業したバタフライ・ネットワークが2017年10月に発表した「iQ」は、iPhoneのLightning端子に接続できる安価なハンディタイプの超音波ツールだ。内蔵されている機械学習アルゴリズムのガイドに従うことで、技術者でなくても自分が探したいものを見つけることができる。

 

この新しい装置は、妊娠の状態を調べたり筋骨格を診断したり、心臓をスキャンしたりといった13種の臨床用途で、米食品医薬品局(FDA)の認可[PDFファイル]を得ている。その目的は、医療用画像処理業界を破壊的に革新し、民主化することだとロスバーグは話す。ちょうどロスバーグが発明したDNAシーケンサー「Ion Torrent」が、ゲノミクス大手のイルミナに風穴を開けたように。

 

では、「Gene Machine」(遺伝子マシン)と名付けた4,000万ドルのヨットでコネチカット州沖を巡るような人物が、どのようにして超音波装置を切手サイズにまで小型化したのだろうか。それは、宇宙の起源の探索から始まる。

 

宇宙のエネルギーを画像化するアルゴリズムとの出会い

ロスバーグは2010年の夏、マサチューセッツ工科大学(MIT)に、ある講義を聞きに行った。マックス・テグマークという物理学者が、宇宙を画像化するための刺激的な新しい方法について説明する講義だ。

 

はるか彼方の星からやって来るエネルギーを測定するには、数万にのぼる望遠鏡をアルゴリズムでつなぎ合わせる必要があった。だが、膨大な数のアンテナに膨大な数のコンピューターと通信させるのは、計算上の大きな障害となることがわかった。そこでテグマークと、ネヴァダ・サンチェスという大学院生は、効率的な方法で作業を分割する手法を思い付き、それを「バタフライ・ネットワーク」と名づけた。

 

聴衆として講義を聴いていたロスバーグは、彼らのアルゴリズムを利用すればまったく別の問題を解決できることに気づいた。数千にのぼる超音波スピーカーのネットワークを1個のシリコンチップ上につくることによって、人体内部の鮮明な3D画像を作成できるかもしれないというアイデアだ。それは、同氏の長女が、腎臓に危険な腫瘍ができる結節性硬化症で果てしない医師の診察を受け続けて以来、ロスバーグが求めてきたものだった。

 

講義のあと、ロスバーグはテグマークに自己紹介して自分のアイデアを話し、テグマークの愛弟子を引き抜く許可を願い出た。そして1年後、ロスバーグはサンチェスと共同でバタフライ・ネットワークを設立し、診療所で最も一般的な画像検査を根本からつくり変える計画に乗り出した。

 

「水晶」からの脱却という挑戦

超音波は精度が低いとされている(粒子の荒いその画像は、MRIやCTスキャンの鮮明さには及ばない)が、その技術は驚くほど複雑だ。動作原理は、コウモリが獲物を探したり物にぶつかるのを回避したりするときに利用するものと同じで、音波を送り出し、戻ってきたエコーから距離を計算する。

 

ほとんどすべての超音波装置では過去40年にわたって、そのために水晶またはセラミックの「圧電振動子」が使われてきた。複数の水晶に電流を流すと、そのかたちが高速で変化し、それぞれから振動が送り出される。この音波が何かにぶつかって戻ってくると、それぞれの水晶から電流が流れる。

 

それぞれの水晶は個別に配線し、ケーブルにつないで別個の装置で処理する必要がある。さらに、特定の深さの画像を得るために、適切な種類の超音波をつくり出すよう、水晶を調整する必要もある。ひとつのプローブは心臓に、もうひとつは胃に、もうひとつは子宮に、という具合だ。複数のプローブと表示画面を備えた一般的なシステムの価格は、高いものになると10万ドルもする。

 

こうした制限を克服しようとしたバタフライ・ネットワーク技術者チームの努力は、2段階で行われた。まずは、水晶を振動させて超音波を発生させるのではなく、半導体チップ上に極小の超音波発生器の層を構成した「静電容量型超音波トランスデューサー(Capacitive Micromachined Ultrasound Transducer=CMUT)」を開発した。

 

2つの電極間に金属板を張った、微小な太鼓のようなものを何列にも並べた部品を想像するといい。そこに多少の電流を流すと板が振動する。電界の力を変更することで、振動の周波数を調整できる。

 

ディープラーニングによる革新

バタフライ・ネットワークは、1994年に初のCMUTをつくったスタンフォード大学のピエール・クーリ=ヤクブ教授からの支援も受けた。同教授の研究は、ゼネラル・エレクトリック(GE)やフィリップス、サムスンなどが超音波を扱う新しい方法に興味を示すきっかけにもなっている。

 

しかし、その技術を大規模に信頼できる方法で機能させるやり方を考え出した企業はなかった。「これは強力な、電界に基づく装置です」とクーリ=ヤクブ教授は述べる。「マスタングと同様に、制御できれば役立ちますが、できなければ失敗の原因になるでしょう」

 

クーリ=ヤクブ教授の工学技術とサンチェスの数学の知識によって、再設計に目途がついた。配線をなくし、音を画像に変換するために必要なアンプや信号プロセッサーが含まれる半導体層にCMUTを直接ボンディングするのだ。

 

データ量は膨大だが、このチップは映画『ワンダーウーマン』をDVDに1秒あたり約20回コピーできる。「昔の超音波をストローだとすれば、これは消防ホースです」とロスバーグは述べる。

 

一方で、コンピューターチップ用に改良された大量市場向け製造の進歩を利用すれば、コストダウンを実現できる。バタフライ・ネットワークでは2018年中に、1台2,000ドルでツールの出荷を開始する計画だとロスバーグは話している。各装置には数十万件の超音波画像で訓練したディープラーニング(深層学習)のソフトウェアを用意し、さまざまな身体部分の高品質撮影と低品質撮影の違いが分かるようにする計画だが、それにはFDAの別の認可が必要だ。

 

救われた一人の男の命

まだ市場には出回っていないものの、この装置によってすでにひとつの命が助かっている。バタフライ・ネットワークの最高医療責任者(CMO)を務める血管外科医のジョン・マーティンは2017年7月、コロラド州デンヴァーの病院で、この装置に対する一連の検証研究を行っていた。

 

マーティンは首にしこりを感じていたが、風邪をひいていたので、単なるリンパ節の反応だと考えていた。いずれにしても装置のテスト中だったので、マーティンはのどにジェルを塗り、プローブをかざしてみた。

 

すると、そこには3.4cmの黒い塊がぼんやりと浮かび上がった。「これはリンパ節ではない」とマーティンは思い、確かにそうではなかった。彼の舌の下側にあったのは、数カ月間成長した扁平上皮がんだったのだ。

 

マーティンは専門家の診察を受け、5時間半にわたる手術を受けて腫瘍を切除した。現在は放射線治療を受けているため、話す声はかすれている。自分ではちょっとしたリンパ節の腫れだと思っていたので、装置のテスト中でなければ専門家の診察は受けなかっただろうとマーティンは話す。そして同様の間違いをする可能性のある人々や、そもそも医師の診察を受けることができない人々にとってこの技術が助けになることを望んでいる。

 

「かつて体温計があるのは病院内だけでした。血圧計も、AED(自動体外式除細動器)もそうでした」とマーティンは述べる。「家庭にいる人々の手に、高度な技術を届けるのが早ければ早いほど、正しい診断を早く行えるようになります。わたしの知る限り、すべての病気において早期発見は良い結果につながります。わたしはその生きた証拠なのです」

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こうした革新的なデバイスは予防医療・早期発見に大きく貢献してくれそうです。

 

 

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